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「〇〇県出身の人」は何人いる?

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この記事で分かること

  • 「〇〇県出身の人」の数を示す統計はあるのか
  • 出生数から出身者数を推計する方法
  • 人口と出身者数を比べると、何が見えてくるのか

初対面の人と話すとき、出身地の話になることがあります。

「北海道出身です」「鹿児島出身です」。そう聞いたとき、ふと気になりました。

「北海道出身の人」は、日本に何人いるのでしょうか?

北海道に住んでいる人の数なら、国勢調査を調べればすぐに分かります。約 500 万人です。

でも、聞きたいのはそこではありません。北海道で生まれて、いまは東京や大阪に住んでいる人も含めた「北海道出身者」の総数です。

調べればすぐ分かるだろう、と思っていました。

1.調べてみたら、統計が存在しなかった

ところが、いくら探しても見つかりません。

人口を扱う統計はいくつもあります。ただ、そのどれもが数えているのは「いま住んでいる場所」でした。国勢調査もそうです。

「どこで生まれたか」を都道府県ごとに集計した統計は、見当たりませんでした。

考えてみれば当然かもしれません。住所は引っ越すたびに更新されますが、出身地は行政が継続的に把握している情報ではないからです。

ないなら、作ってみることにします。

2.ないなら、出生数から作ってみる

考え方はとても単純です。

「その県で生まれ、いまも生きている人の数」を、出身者数とみなす。

つまり、各県の出生数を過去にさかのぼって足していけばいい、ということになります。

どこまでさかのぼるか。日本人の平均寿命は 84 歳ほどです。それに近い、直近 81 年分の出生数を合計することにしました。

使うのは、統計局 e-Stat が公開している人口動態調査の出生数です。47 都道府県すべてが対象です。

政府統計の総合窓口(e-Stat)日本の政府統計をまとめて閲覧・取得できるポータルサイト。分野別や府省別など、複数の方法から統計表を探せます。e-stat.go.jp

この方法が大きく外れていないかは、合計値で確かめられます。

日本で生まれた人がそのまま日本に住み続けるとすれば、47 都道府県の出身者数を全部足した数は、日本の総人口に近くなるはずです。

実際に足してみると 約 1 億 2,376 万人。総人口 1 億 2,397 万人と、ほぼ一致しました。

少なくとも、桁違いの間違いはしていなさそうです。

3.まずは、出身者数ランキング

では、出身者が最も多い都道府県はどこでしょうか。

出身者数の推計(上位4都府県)
東京都1128万人
大阪府806万人
神奈川県667万人
愛知県663万人

※ 記事内で説明した集計をもとに作成した図です。

1 位は東京都で 1,128 万人。人口の多い都府県が並んでいて、正直あまり驚きはありません。

ただ、ひとつだけ引っかかる点があります。2 位が大阪府で、3 位が神奈川県になっていることです。

住んでいる人の数で並べると、神奈川県のほうが大阪府より多いはずです。ところが「生まれた人の数」で並べると、順位が入れ替わります。

神奈川県で生まれた人よりも、神奈川県に住んでいる人のほうが多い、ということです。この差は、どこから来ているのでしょうか。

4.本題:人口と比べると、何が見える?

そこで、各県について「いま住んでいる人の数」から「その県で生まれた人の数」を引いてみます。

「人口 − 出身者数」の読み方
結果意味
プラス出ていった人より、入ってきた人のほうが多い
マイナス入ってきた人より、出ていった人のほうが多い

ここで少し予想してみてください。

最も大きくプラスになるのは、どの県でしょうか?

そして、最も大きくマイナスになるのは?

47 都道府県すべてで計算した結果が、こちらです。

都道府県ごとの人口と出身者数の差を示す横棒グラフ。東京・神奈川・埼玉・千葉が大きく正、鹿児島・長崎・北海道・福島が負
「人口 − 出身者数」。青が流入超過、赤が流出超過を表す

5.首都圏だけ、明らかに様子が違う

グラフの上のほうに、突き抜けた青い棒が 4 本並んでいます。

東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県。首都圏の1都3県です。

東京都と神奈川県はいずれも 250 万人前後、埼玉県が約 190 万人、千葉県が約 160 万人のプラスでした。

東京都だけが多いのだろうと思っていたので、神奈川・埼玉・千葉まで揃って高い水準にあるのは意外でした。首都圏は、東京を中心とした一つの受け皿として機能しているようです。

愛知県と大阪府もプラスですが、それぞれ 90 万人前後、75 万人前後。首都圏の1都3県とは、はっきりした差があります。

逆に、大きくマイナスになったのは鹿児島県、長崎県、北海道、福島県でした。その県で生まれ、いまは県外で暮らしている人が、それだけ多いということになります。

「地方から都市部へ」という人の流れは、よく語られる話です。それが、出生数の積み上げというまったく別の角度からも見えてきました。

6.ただし、沖縄県は例外かもしれない

ところが、グラフの一番下に気になる県があります。

沖縄県です。

約 47 万人のプラスです。九州の他県がそろってマイナスなのに、沖縄だけが逆を向いています。

ただし、この数字は額面どおりには受け取れません。

沖縄県には 1972 年以前の出生数データがありません。本土復帰前だからです。今回はその期間を 1975 年の値で埋めました。

沖縄県は、現在も出生率が高い県です。本土復帰前の出生数が 1975 年より多かった可能性は、十分にあります。

もしそうなら、今回の補完は実際より少ない出生数を当てはめたことになります。

出身者数を少なく見積もれば、そこから引き算した「人口 − 出身者数」は、そのぶん大きく出ます。

7.🔍 ちなみに、どうやって調べた?

ここからは、今回の推計方法について少し詳しく説明します。

「どうやって出身者数を計算したの?」と気になった方はぜひどうぞ。

推計方法をくわしく見る

使用したデータ

本文でも触れたとおり、e-Stat の人口動態調査から都道府県別の出生数を取得しました。分野「人口・世帯」の中にある「A41 出生」を選びます。

e-Statの表示項目選択画面。人口・世帯の分野からA41 出生を選ぶところ
e-Statで「A41 出生」を選択する

取得できるのは、全国と各都道府県の年次別出生数です。

都道府県別・年次別の出生数が並んだ統計表
取得した統計表。全国と各都道府県の年次別出生数が並ぶ

推計の考え方

「その県で生まれ、いまも生きている人の数」を出身者数とみなします。日本人の平均寿命 84 歳を参考に、直近 81 年分の出生数を合計しました。

つまり、81 年より前に生まれた人はすでに亡くなっているものとして扱っています。

欠測データの処理

そのままでは使えない箇所が 2 つありました。

1 つ目は、古い年次の調査が 5 年ごとにしか行われていないことです。間の年が欠測になります。

2001年から2004年、2006年から2009年がNaNになっているデータフレーム
5年ごとの調査のため、間の年がNaNになる

ここは直近年度の値で補完しました。

2 つ目は沖縄県です。本土復帰前にあたる 1972 年以前のデータが存在しません。

沖縄県の1947年から1970年が欠測になっている表
沖縄県は1972年以前のデータが存在しない

こちらは 1975 年の値で埋めています。本文で触れたとおり、この処理が沖縄県の結果に影響している可能性があります。

推計の検算

47 都道府県の出身者数を合計すると 約 1 億 2,376 万人。日本の総人口 1 億 2,397 万人とほぼ一致しました。

国内で生まれた人がそのまま国内に住み続けると仮定すれば、この 2 つは近い値になるはずです。大きなずれがないことから、推計の桁は合っていると考えられます。

使用したコード

元記事には実際の分析コードが掲載されていません。そのため、ここではコードを創作して掲載しません。

分析上の注意点

今回の数字は推計であり、実際の出身者数とは異なります。特に次の点に注意が必要です。

  • 誰がいつ亡くなったかを個別に追えないため、平均寿命による一律の仮定を置いている
  • 実際には都道府県ごとに平均寿命の差があり、そのぶんの誤差が残る
  • 海外で生まれた人や、海外に住んでいる人は考慮していない
  • 5年ごとの欠測を直近年度の値で補完しているため、実際の増減を反映していない
  • 沖縄県は1972年以前を1975年の値で補完しており、他県と条件が異なる

8.まとめ

  • 「〇〇県出身の人が何人いるか」を示す公式統計は見当たらなかった
  • 人口との差を見ると、首都圏1都3県だけが突出して大きなプラスだった
  • 鹿児島県・長崎県・北海道・福島県は大きなマイナスで、地方から都市部への流れが数字に表れた

9.次に調べたいこと

今回の推計から、さらに気になる疑問が出てきました。

  • 首都圏に流入した人は、どの県から来ているのか
  • 年代によって、流入・流出の傾向は変わっているのか
  • 沖縄県の出生数を実際の値で補えば、結果はどう変わるのか
  • 都道府県ごとの平均寿命を考慮すると、推計はどれだけ変わるのか
  • 「出身者数が多い県」と「有名人の出身地」に関係はあるのか

「出身者は何人いるのか」という素朴な疑問から始めたら、統計そのものが存在しないという事実に行き当たりました。

ないものは作ってみる。そうすると、人の流れという別の景色が見えてきます。